ウォーターサーバー「every frecious」のある暮らしevery frecious life
浄水型ウォーターサーバー「every frecious」は、部屋に馴染むスタンダードなデザインが魅力で万人に長年、愛されてきました。そして、2025年夏、〈BEAMS DESIGN〉プロデュースの「every frecious mini」がデビュー。“ヴィンテージ”など、ファッションをアイデアソースにデザインした、空間のアクセントになるポップなウォーターサーバーの魅力を紐解く、リリースイベントを開催しました。制作に携わった〈ビームス クリエイティブ〉の橘高つむぎさん、竹野碧海さん、プロダクトデザイナー安積伸さん、〈富士山GXホールディングス〉マーケティング事業部の久保雅裕による、開発背景にまつわるトークセッションを展開。当日のトーク内容をお届けします。
(写真左から)
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〈富士山GXホールディングス株式会社〉
マーケティング事業部
部長久保 雅裕
富士山GXホールディングス、マーケティング事業部に2010年入社。創業のメンバーとしてブランドの立ち上げから参加。天然水サーバー「FRECIOUS」及び、浄水型サーバー「every frecious」などすべてのウォーターサーバーのブランディングを手がける。
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プロダクトデザイナー
安積 伸
国際的な企業でプロダクトデザインを軸とした幅広い領域で活動を行う。FX国際インテリアデザイン賞をはじめ、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞など国内外での受賞多数。2016年より日本に拠点を移し、法政大学デザイン工学部システムデザイン学科教授に就任。
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〈株式会社ビームス クリエイティブ〉
橘高 つむぎ
2007年に〈BEAMS〉に入社後、〈BEAMS〉のあらゆるクリエイティブ、イベントやフェスのショッパーをはじめとしたグッズ制作を担当。2022年、〈マンガート ビームス〉のリブランディングを機に、プロデューサーに就任。「every frecious mini」のカラーデザインを手がけた。
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〈株式会社ビームス クリエイティブ〉
竹野 碧海
2012年に〈BEAMS〉に入社後、さまざまなレーベルの販促資材やキャンペーン、WEBコンテンツのデザインを担当。3年前に子どもが誕生してからは、育児と仕事の両立に日々奮闘中。「every frecious mini」のカラーデザインを手がけた。
〈BEAMS DESIGN〉プロデュースによる初のウォーターサーバー
〈BEAMS DESIGN〉プロデュースの卓上タイプのウォーターサーバー「every frecious mini」はこれまでのエブリィフレシャスのシンプルなデザインとは一線を画す、非常に新しいデザインのように感じられます。まずは、このプロジェクトがどのように実現したのか。背景について教えてください。
久保:弊社は創業当時からユーザーのライフスタイルに寄り添った、機能性とデザイン性に力を注いだウォーターサーバーを製作してきました。そうした流れの中で、数年前からさらにブランディングの強化をしたい、という想いが社内で立ち上がりました。自分なりに構想を練っている際に、〈BEAMS〉さんが出版している『BEAMS AT HOME』という本のことが思い浮かびました。そこにはスタッフの方の等身大のライフスタイル、自宅のインテリアなどが美しい写真とともに掲載されていました。なかでも特出して気になったのが、ウォーターサーバーを暮らしに上手に取り込んでいるスタッフの方の暮らしぶりです。その印象がずっと残っていたので、〈BEAMS〉さんにお声がけしよう、と思い至りました。
橘高:とても有難いお声がけでした。最初に「every frecious」のプロダクトを見たときに、デザインとしてしっかり完成されているものだったので、どのように〈BEAMS〉らしさを表現できるかについて、熟考しました。先ほど、久保さんがおっしゃっていただいたように、私たちはスタッフ全員が暮らしを大切に楽しんでいる集団なので、〈BEAMS〉スタッフだったら「every frecious」をどう使うのかを考えてみました。その中で浮き上がるデザイン、使用するシチュエーションを含めて具体的なイメージを提案できたら、新しくて面白い取り組みができるのではないか、と。すごくワクワクしました。
竹野さんは、普段は販促物のデザインをされていると思うのですが、今回の取り組みはそうしたものづくりとは異なる点も多かったのではないかと思います。その辺りについていかがでしょうか?
竹野:このような家電製品をプロデュースさせていただくのは、〈BEAMS〉として初めての取り組みでした。それゆえに、最初は難しさを感じた部分がありました。打ち合わせを重ねて、久保さんや安積さんをはじめ、さまざまな方のご意見をいただきながら細かい部分までこだわったデザインができたんじゃないかな、と思っています。先ほどの橘高が申し上げた内容に重なりますが、〈BEAMS〉らしさを表現するのはもちろんのこと、「every frecious mini」を生活に取り入れたときにライフスタイルがより楽しく、豊かになるようなイメージを提案するにはどうしたらいいんだろう、ということを思案しました。実は今まで実生活でウォーターサーバーを使ったことがなくて。家があまり広くないこともあって、どこか手の届かないプロダクトという印象がありました。今回の取り組みを通して、ウォーターサーバーそのものに関してすごく勉強させていただいたので、とても良い機会になりました。
〈BEAMS〉らしさを「クレイジーパターン」というデザインの手法で表現
「every frecious mini Produced by BEAMS DESIGN」はオリーブとベージュを基調にした2色展開。
「every frecious mini Produced by BEAMS DESIGN」のデザインの大きな特徴を教えてください。
橘高:〈BEAMS〉らしい表現を考えていく中で、デザインに「クレイジーパターン」という切り口を採用しようと思いました。「クレイジーパターン」とは、異なる素材や色を組み合わせる手法のことを指します。〈BEAMS〉ではさまざまな商品をこの手法で表現したものを発売していて、それがとてもお客様に好評だった実績があります。実は「クレイジーパターン」には、起源的な逸話があるんです。アメリカのアパレルブランドの「ブルックスブラザーズ」の「ファンシャツ」というアイコン的なアイテムがあるのですが、このアイテムに関係しています。当時同社の副社長がシャツの工場へ視察に行くと、新入社員がポロカラーシャツの縫製を練習するために切れ端を縫い合わせたシャツを作っていました。それを見た副社長がそのシャツを面白がって、商品化を決意したそうです。そうしたデザインを一般的に「クレイジーパターン」と呼んでいます。〈BEAMS〉は「面白いから商品にしてみよう」というノリを大切にしている会社でもあるので、共鳴するポイントがありました。
久保さんは、実際に「クレイジーパターン」について提案を受けたときには、どんなふうに思われましたか?
久保:まさに〈BEAMS〉さんならではの提案だなと思いました。そのほかにも素敵な提案がたくさんあったのですが、「クレイジーパターン」は一番〈BEAMS〉さんらしいと思いました。「ブルックスブラザーズ」さん然り、ものづくりの背景にあるストーリーがすごく大切だという事に改めて気付かされました。ウォーターサーバーの業界にはこういったカラーリングのものはないので、印象的に映るのではないかと思います。
竹野:そうですね。ポップな色使いは〈BEAMS〉スタッフが暮らしている住まいにとても合うように思います。ベースとなる色がある中にさらに色を足していくことは、なかなか挑戦的なことだと思ったのですが、元々のプロダクトのデザインが洗練されていたからこそ実現できました。
「every frecious」ブランドのスタンダードな揺るぎないデザインがあるから、新たな挑戦ができますよね。「every frecious mini」のプロダクトデザインを行った安積さんにも最初の構想段階でご相談されたとのことですが、安積さんは「クレイジーパターン」の手法についてどのように感じていらっしゃいますか?
安積:最初に「クレイジーパターン」のマルチカラーを拝見したときに、私が思い出したのは’80年代の家電です。当時、ソニー社が「My First Sony」という、子ども向けのAV機器のブランドをリリースした事を鮮明に記憶しています。パーツごとに原色で色分けされたデザインは、80年代に流行した「ポストモダニズム・デザイン」の影響が強く感じられます。イタリアの建築家・インダストリアルデザイナーのエットレ・ソットサス、ポストモダンを代表する〈メンフィス〉という多国籍グループが台頭していた時代です。若手デザイナーたちが機能主義だけではない、新しい活気に満ちたデザインをしようという試みが、世の中に受け入れられた時期でもありました。そうした流れを捉えながらも、2025年にどうやってリバイバルしていくのか。ファッションブランドである〈BEAMS〉さん独自の解釈に期待しました。マルチカラーで採用された色はそれぞれの明度と彩度がかなり近いトーンで構成されており、絶妙に馴染んでいるところがとても現代的な印象を与えていると感じました。
安積さんは「クレイジーパターン」にどこか‘80年代のデザインのムードを感じられたのですね。
安積:そうですね。ファッションやデザインの世界に同様に言えることですが、いつの時代も、流行を行ったり来たり、リバイバルしています。2025年現在は、ミニマルなものやシンプルなデザインが世の中に溢れていて、静かで何も主張しないのが美しいというトレンドがあると思います。それはそれでとても理解できますが、そうしたプロダクトが世の中に溢れてくると、同じベクトルのものばかりだと物足りない、という気持ちも浮かび上がってきます。我々クリエイターとしては、それにどう向き合うかが毎回、課題です。今回のプロジェクトでは、新しい時代に移り変わっていく中で“革新的なもの”として新たな提案ができるのでは、と思いました。
時間をかけてじっくり編み上げた、ウォーターサーバーの配色
「every frecious mini Produced by BEAMS DESIGN」は当初は「every frecious tall」というminiシリーズよりも2倍以上のサイズのシリーズにされる構想もお有りだったと伺いしましたが、方向転換された理由を教えてください。
久保:最初の〈BEAMS〉さんのご提案は「tall」だったんです。「tall」の場合は「mini」の2倍以上のサイズになります。空間に占める面積がすごく大きくなるので、すごくハイセンスな方は別として、空間に取り入れるのは少しハイレベルかもしれない、と。「mini」にすることで、インテリアのアクセントにも出来て、より取り入れやすくなるのではないかと判断しました。
完成に至るまで色の配色はかなり試行錯誤されたそうですが、どのような過程があったのか教えてもらえますか。
久保:“ポップなオリーブ”と“ベーシックなベージュ”という配色を決めた後、実際にサーバーに色をつけ、色の濃度も含めて複数パターン考えました。いつもよりも多めに各色20パターンくらい、それぞれのパネルも含めて作りました。色選びの時には、弊社に安積さんと〈BEAMS〉さんにいらしていただき、みんなで実際のパネルを組み合わせながら時間をかけて詰めていきました。
安積:オリーブ、ベージュ色の微妙なトーン合わせが重要だということを皆さんに認識いただくことから始めました。例えば自然光、蛍光灯、白熱灯の光によっても、色が全然違って見えます。さまざまな光の下で確認しましょう、とアドバイスしました。「every frecious」シリーズのプロダクトデザインに携わるにあたり、ずっと意識していたのはサーバーから供給される清らかな水のイメージを邪魔する要素は排除した方が良いということ。そうした事に留意して色味のコントロールをしましょう、とお話したことを記憶しております。
竹野:色の指定をするときは、塗装用の色見本帳を基準にします。その中から番号を選び、試作しました。「この番号とこの番号の中間くらいの色でお願いできませんか?」と無茶なオーダーを職人の方にさせていただいたことも。見本にはない難しいお願いでも、オリジナルの色を職人さんたちが作ってくださる技術の凄さに心から感動しました。最終的に色を決めていく段階では、安積さんにも立ち会っていただきました。例えば、「〈BEAMS〉らしいポップさを出すには、もっとこの色味がいいんじゃないか」と弊社の個性に寄り添ったアドバイスもくださいました。とても勉強になりましたし、私たちも自信を持ってお勧めできるプロダクトに仕上げることができたと思います。
「every frecious mini Produced by BEAMS DESIGN」はとても素敵な2つの型なのですが、それぞれが別個のものに見えない親和性のようなものを感じられますよね。個体としての完成度だけではなく、2つが並んだときに、ガチャガチャしないバランス感を意識しながら色を決めていきました。
久保:そうですね。個人的にはこの天面のクリアなオレンジカラーがいいアクセントになっていると思っています。〈BEAMS〉さんらしさもこのカラーリングに表れていると思います。今まで「every frecious」のデザインのトーン&マナーは「空間に馴染ませる」というところでやってきましたが、〈BEAMS〉さんプロデュースで新たなトーンを打ち出すインパクトを与えられたらと思います。弊社の社内で20代の新卒の社員から60代の役員まで、〈BEAMS〉さんらしさを感じられるデザインで喜んでいました。自分なりにとても手応えを感じています。
ウォーターサーバーの色に合わせて数十色の候補から選定したロゴ
もう一つ今回、注目したいポイントはロゴの存在感ですよね。
安積:そうですね。ロゴが堂々としすぎると、カラーリングの存在感が損なわれてしまうように感じました。今の時代的にも「どこそこのブランドを持っている」ということに価値を置く社会ではなくなってきているように思います。それよりも「ウォーターサーバーを暮らしに取り入れた、丁寧な生活を楽しんでいることが楽しい」といった、上質な生活の価値を大切にしている人が多いように思います。現代の価値観を反映して、なるべくロゴは目立たなく、小さくする方向性にシフトしました。しかし、ロゴを載せるからにはブランドが貴重なものとして、貧相に見えないようなサイズを心がけたいと思いました。
橘高:〈BEAMS〉でも商品やさまざまな販促物で扱う機会があるため、私たちもロゴのあり方について、慎重に考えています。お客様のものの選び方や時流を鑑みながら、ロゴの載せ方は日々、変えていかなければいけないところだと思っています。先ほど安積さんがおっしゃっていたように、「every frecious mini」に関するロゴのあり方について、非常に共感できるものがあると感じました。
写真(左):アメリカンカジュアルな空間にも映えるヴィンテージミックス オリーブ
写真(右):ヴィンテージミックス ベージュは木製のキャビネットやスツールとも調和
橘高さんと竹野さんは、完成品についてどのようなご感想をお持ちですか?
橘高:竹野と一緒に平面でデザインしているときには、完成品が想像できない部分もあったのですが、実際に立体になったときに前面の局面の色が馴染む、柔らかい配色になったところが個人的には良い驚きで。ロゴに関しては先ほどお伝えした通り、何度もシミュレーションを重ねた甲斐があって、プロダクトになじみながらもしっかりと静かに主張があるものに仕上がったと思います。
竹野:ポップなものを好む方、ベーシックなものを好む方にでもお選びいただけるプロダクトになったんじゃないかな、と。手前味噌で恐縮ですが、スタッフの家に置いてある様子を見たときに家に合うのは「これだ!」と確信するほど、フィット感がすごく素敵で。“インテリアアイテム”として楽しんでもらえるものになったのではないかな、と思います。
暮らしに彩りを添える「every frecious mini」がある風景
〈BEAMS〉さんのスタッフの自宅で「every frecious mini」を使っている様子を撮影したコンセプトムービーを制作されましたが、こちらの制作背景について教えてください。
久保:この撮影に私は立ち会っていないのですが、弊社の社員が数名、立ち会いました。完成したムービーを見ると、やはり〈BEAMS〉さんの社員の方々の「every frecious mini」の使い方や空間の取り入れ方がお上手で。センスの良いインテリア空間の中で、「every frecious mini」がうまく溶け込んでいて、そこに負けずに存在している状態がいいな、と思いました。
安積さんはコンセプトムービーを見てどのように感じていらっしゃいますか?
安積:このマルチカラーの「every frecious mini」の存在によって、さらに暮らしに楽しさが増すようなムードが感じられ、いいムービーだと思いました。オリーブやベージュをベースにしているサーバーは、木のインテリアとの相性も良く、生活を構成する様々なインテリア雑貨にマッチするカラーだと思います。シンプルモダンみたいなものをずっと求め続けてきた世の中の潮流があり、このプロジェクトはそれに対するある種のカウンターみたいなものができたな、と私は感じています。世の中の方に、その価値を噛み締めてもらうひとつのきっかけになったら良いなと思います。
久保:そうですね。サーバーを移動させて使っている様子もなかなか新しく感じました。それは「mini」だからできることで。
橘高:「mini」の利点はいろんなところに置けるというところにもありますものね。2台目を考えている方にもぜひ、使ってほしいなという想いがあります。〈BEAMS〉のファンの方々にもぜひ、ウォーターサーバーのある暮らしを楽しんでいただきたいです。
久保:ありがとうございます。また、〈BEAMS〉さんと新たな企画を考えられたらいいな、と思います。今後の展開にも期待していただきたいです。
Photo : Hitoshi Sakurai
edit & text : Seika Yajima